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30年変わらぬ卒業文集の書式が、注意集中や読み書きの苦手な子にどれほど困難か。

先日、6年生のAくんが「先生、今日はこれをやる」とカバンから出したのは

卒業文集の原稿。下書きを清書用の紙に写すという作業が学校で終わらず、家でやってくることになっているらしい。

今日は「正負の数の減法」の予習をやるつもりで準備してたのにぃ。。。と、がっかりする私に「明日までに出さないと、ぼく卒業できないんだ」と訴えます。

あぁ、私が最後の砦なのね・・・、とAくんの切羽詰まった心境が伝わってきました。

想像してみてください。

A4の半分(=A5)のスペースに、約800字の原稿を収める、という卒業文集の書式。つまり、新聞の活字を一回り大きくしたぐらいのサイズの字で、マスに埋めていかなければならない。しかも清書用の紙は、あれ、なんていう用紙ですかね? 印刷に写らない薄水色の線で書かれた原稿用紙。あの水色の線、見づらいんですよね。悲しいかな、老眼が入ってきた私にもつらい。

大人の私でもうんざりするような作業なワケですが、これがADHDの診断がついていて、字を書くことも人一倍苦手なAくんにとって、どれほど大変なことか・・・・6年間付き合ってきた学校の先生たち、気付かなかったのかな。それとも、Aくんが「できない」と伝えられなかったから? (後者の可能性も高い)

何より驚きなのは、これと全く同じものを、私自身が小学校6年生の時にやった、ということ。

Aくんの出した用紙を見て、思わず「昭和かっ!」と突っ込んでしまいました。

あとで3つ年上の友人に「小学校の時、こういう紙で卒業文集書かなかった?」と聞いたら、「おれ、ガリ版だった・・・」。 世代のラインがここで引かれました。

そう、これは当時、最新の印刷技術だったのですよ。ガリガリやらなくても、書いたそのままの文字が印刷できるようになった。でも、コピーはまだまだ高値だった時代。

平成になり、21世紀になり、その間に、「ぷりんとごっこ」ができ、ワープロができ、パソコンがが主流になり、家庭用プリンターも普及し、そして今やペーパーレスの時代。コピー機だって拡大縮小機能など、いろいろな機能がつき、ついにはホチキス留めまでしてくれる時代。

世の中はそれだけ進歩し、学校の先生だってパソコンでテストや学級通信作るのが当たり前の今、なぜ、30年前と同じ紙に数ミリサイズの文字を800字書かなければいけない・・・・?

子どもの頃の私は、作文が好きだったし、細かい作業も得意だった。だから、それは苦ではなかった。だけど、みんながそうというわけではないのです。

そもそも、ワーキングメモリーをフル稼働しなければならないこのような作業は、Aくんのようなタイプの子どもたちには、とても困難をきたします。 

小さなマスの中に「事」とか「夢」という字を収めるのに苦戦するAくん、はみ出ては消しゴムで消す。そのたびに他の字も消えてしまう。イライラする。爆発しそうになる。だから怖くてできない。やらない。で、できなかったから、「家でやってきなさい」と言われ、今に至っている。

彼ができなくて癇癪を起こすとしたら、それはADHDだからではなく、この作業があまりにも彼の苦手さに無配慮だからだと思うのです。

ふと頭に浮かんだのが、UDL(学びのユニバーサルデザイン)ガイドライン5の2項の解説にある、こんなくだり。

学校では、新しいリテラシーのツールよりも昔ながらのツールにこだわる傾向があちこちで見られる。この傾向には、いくつかの弊害がある。

1)生徒たちの将来に対応できない。 2)実行できる内容と教える手法の幅が限られてしまう。 そして、もっとも重大なのは、3)うまくできる生徒が限られてしまう。

「パソコンを使ったら、書くのも消すのも一瞬でできるのに」と、Aくんがつぶやきます。

「私もそう思う」と、ついつぶやき返してしまいました。

この1年半かけて、Aくんにキーボードの操作を教えてきたのに、それが全然生かせない。(学校だってパソコンの授業やってるのに)

せめて、大きな原稿用紙に書かせて、縮小コピーするとか、「今すぐできる手立て」があるにもかかわらず、薄水色のA4半分の原稿用紙を前に、その手立てを打てないジレンマ。

しかし、ここで時代遅れな用紙に愚痴っていても始まらないわけで、とにかくあと1時間余りで完成させられなければ、「アンダンテの先生なら、力を貸してくれる」と期待してくれたAくんに応えられない。。。

そこで、どんな“支援ツール”を使って対処したか、次回にご紹介します。

さらに、UDL的にはどう解決するか、そのあとに考えてみたいと思います。

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