親が厳しすぎるからではない~たとえば自閉っ子の場合②~|アンダンテ西荻教育研究所・アンダンテプリモ

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親が厳しすぎるからではない~たとえば自閉っ子の場合②~

(「親のせいではない」シリーズは、こちらから順に続いています。)

本日は、シリーズ最後に、もう一度自閉っ子の話に戻します。

自閉っ子の場合①で、自閉の特性が親の対応を引き出してしまい、結果として傍から見ると親がヒステリックや過干渉に見えてしまうことがある、というお話をしました。

今日は、ちょっと違う構図です。それは、自閉っ子、アスペっ子独特の「思い込み」「勘違い」からくる誤解です。

自閉症は、たくさんの情報を統合して全体を把握したり状況を理解することが不得手です。ですから、私たちとはちょっと違う発想や思考回路でものごとを判断し、誤認識からトラブルに発展することがしばしばあります。

そんな例は枚挙にいとまがありませんが、私が印象的だったエピソードをひとつ。

アスペルガー症候群のA青年は、Bくんと仲良くなりたくて、会うたびにプレゼントを渡していました。それを知った私はA青年に「そんなにしょっちゅうモノをあげるのは、やめた方がいいと思う」とたしなめたところ、「Bくんは喜んでいるのに、なぜいけないのか?」と聞き返されました。このあたりの理解の困難が、アスペっ子が苦労しているところなので、「モノをあげることでつながっている関係は、本当の友達とは言えない。プレゼントをあげるのは誕生日やクリスマスぐらいでいい」と私なりに説明したのですが、彼にはわかりにくかったようです。1週間後、私のところにやってきて、突然「先生、先週はご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした!」と頭を下げるではありませんか。何のことか分からず、聞き出していくと、彼はプレゼントの一件を1週間悩みぬき、このように結論付けたらしいのです。

「Bくんにモノをあげるのはよくない」と先生に言われた=先生に叱られた → 先生に叱られたということは、先生は怒っているのだろう。 → 先生が怒ったのは、自分のしたことが何か先生に迷惑をかけることだったのだろう。 → 先生に謝らなくては!

「やめた方がいいと思うよ」と助言しただけなのに「叱られた!」と受け取る「思い込み」に、助言の理由も根本的に「勘違い」。つくづく自閉っ子、アスペっ子らしさを感じた出来事でした。

そんな彼らの勘違い言動が、先生から見える親御さん像をゆがませてしまうことがあります。典型的なのが、ことあるごとに「お母さんに言わないでっ!」と懇願したり、「お母さんに叱られる!」と泣いたりする・・・・。そんな子どもの態度に、つい訝ってしまいます。「親が過剰に叱っているのではないか」「ひょっとして虐待されているのではないかしら」と。

教師としてその感覚は必要と思いますが、あわせて自閉の子の特性もよく理解しておかないと、真偽の見極めは難しく、誤解が誤解を生むこともあります。

私のところに通ってきているアスペっ子のGくんは、「100点じゃないとイヤ」というこだわりがあります。(「1番病」(1番じゃないと許せない)「満点病」の類は自閉っ子にありがちです。) 得意なつもりの算数で、ひとつでも間違えたりすると、ノートを破ったり筆箱を投げたり机を倒したりの騒ぎになってしまうので、担任の先生が手を焼いています。

そこで私はGくんに次のことを教えました。

①間違えることは、悪いことではありません。間違えたとき、どうして間違えたのかを知ることが勉強です。

②間違えたときに、怒ったり暴れたりするのはよくないことなので、叱られます。間違えたときは、もう一度やり直しましょう。分からないときは「先生教えてください」と言いましょう。

同時に、宿題で彼がストレスをためないよう、「できない宿題を出さない」ようにしてほしいと、担任の先生にお願いしました。

すると担任の先生の訴えは、こうです。

「宿題については、彼にはいつも『できなかったら全部やらなくてもいい』と言っています。なのに全部必ずやって来るんです。お母さんが厳しくて、全部やらせてるんだと思います。だからストレスがたまって学校で暴れるんです。間違えるのを嫌がるのも、お母さんに叱られると思っているからです。彼の問題行動は、親御さんが厳しすぎるのが原因だと思います」

えっと、先生それは誤解ですー。彼のお母さんは、決してそんなお母さんではありませんよ。・・・・と言っても、その先生は信じてくれません。「いいえ、Gくんは、朝学校に行きたくないとお母さんに訴えても、布団を剥ぎ取られて叩き起こされ無理やり行かされた!と言った事もあります。外面と違って、家ではかなりキツイお母さんなんですよ」

先生は彼の問題行動がお母さんの育て方のせいであると信じてしまっているので、「できなかったらやらなくていい」ではなく、できる宿題を渡してほしいという私からのリクエストが納得できないようです。なんとか、彼らの特性を理解してもらうために説明する機会がもてたらと思っているのですが。。。

「助言」を「叱責」と思い込む、ポンと肩をたたいて呼び止められたら「叩かれた!」と怒る、通り過ぎるときにちょっと体がぶつかっただけで「攻撃された!」とつかみかかる、そんなトラブルが絶えない自閉っ子、アスペっ子たち。

「100点とったら褒められる=100点じゃない叱られる」という極端思考に陥っていたり、宿題を「できなければ全部やらなくていい」と言われて「全部やらなければ自分はできない、ダメな人間だ」と思い込んでいたりすることもあります。お母さんが朝、子どもを起こすときのよくある光景が、Gくんには「乱暴に起こされた」と思っていても不思議ではありません。

こういった背景を知れば、対処は自ずと見えてくると思うんですが・・・。

ちなみに、彼らは嘘をついているわけではありません。彼らは実際「そう感じる」「そう思い込んでいる」のです。だからこそ、叱責の仕方には配慮が必要ですし、子ども同士のトラブルも慎重に対応してもらいたいのです。(悪いのはあんたでしょ!と一方的に叱っても理解できませんし、誤解していれば真意を分かりやすく説明してあげる必要があります。一方で「本当に」いじめや虐待にあうリスクも高い子どもたちです)

折しも昨日聴いた服巻智子先生の講演会は、アスペルガー症候群の人の触法行為の現状と支援がテーマで、その中でも「カンチガイ」の積み重ねが悲劇につながった例に触れていらっしゃいました。

※この内容に関連して、補足記事があります。こちらもお読みください。

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