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インクルージョン ~特別支援教育の根底にある理念
今日は、一押しの本を紹介したいと思います。
インクルージョン―普通学級の特別支援教育マニュアル 価格:¥ 1,995(税込) 発売日:2008-06 |
新聞で紹介されたのを見て取り寄せたのですが、ぜひ、先生方に読んでいただきたいと思います。
まず、タイトルにガツンとやられました。
そもそも「特殊教育」から「特別支援教育」へと変わった根底にある考え方が、「インクルージョン」であることを、このタイトルが思い出させてくれました。
「インクルージョン? なにそれ、聞いたことな~い」なんていう先生もいるのでしょうか? 自分には関係ないと思っている先生もいらっしゃるかもしれません。
でも、そうではないんです。私もあなたも、多いに関係があります。
「インクルージョン」もしくは「インクルーシブ教育」といわれる概念は、1994年の「ユネスコ サラマンカ宣言」を受けて、世界が目指している教育のあり方です。
つまり、「健常児は普通教育、障害児は特殊教育」という、かつての「分離教育」から、障害の有無で分けない「統合教育」を経て、いまは「さまざまなニーズをもつ人(子ども)が“混合”して存在する」ことを前提とした教育へ。
サラマンカ会議は日本も参加しているのに、この宣言の内容はあまり周知されていませんね。でも、「特別支援教育」の理念が、この流れを受けていることは確かです。
この本は、米国の教師によって書かれた教師向けの本の翻訳です。私が何度かアメリカに足を運んで、現地の学校や施設を訪れた際に度々感じてきたギャップに、これを読む中でもぶつかりました。それが「インクルージョン」を念頭においているか否かの違いなのでしょう。
あちらでは、支援を必要とする子どもたちがいたとしても、「可能な限りノーマルに近い状態」を維持するため、支援もその子にとって必要かつ最小限となるよう配慮します。たとえば、「字が十分に読めない子」がいたとして、「字が読めないなら特別クラスに転級」としたら、字を読むこと以外については「ノーマルな状態」での学習を受ける機会を失ってしまう。字を読めないだけであれば、リーディングの時間だけ「取り出し授業」を行う方が、よりノーマルに近いのではないか。 でも、その時間、通常学級での授業を受けることはできません。 もしかしたら、「補助教員が問題文を読んであげる」とか、「音声テキストの使用」「テストの回答時間を15分延長することを認める」等の配慮があれば、通常学級で十分やっていけるという子もいるかもしれません。その子がどの程度の支援が必要かという視点と、可能な限り「通常の環境・条件」を妨げないようにという視点の両方から「個々のニーズ」を見極め、支援の種類を検討するのです。
そんな「支援」をたくさん見てきて、そして日本の学校で先生方と話をすると、「できないからって特別扱いはよくない」「ついてこられないから、通常級は無理なんじゃないか」・・・的な発想の違いにぶつかってしまうのです。
インクルージョンは、世界の申し合せであり、日本ももちろん、その「世界」に含まれていて、だから特別支援教育は始まった。つまり、先生、あなたも変わっていく義務があるのです。
本書の訳者は、「初めから最後まで通して読むというよりも、必要な部分だけ読み、参考になるアイデアを使ってみてください」と「前書き」で述べていますが、私はむしろ本文の「はじめに」と「序章」だけでも、ぜひ読んで、その理念を知ってほしいと思います。
それと、この本をオススメする別の理由があります。それは
このブログ発の拙著
先生が明日からできること。 |
が伝えたかったことと、限りなく近いから。
ただ、拙著は忙しい先生方のために「1時間で読める本」というコンセプトで作りました。言葉少なくして多くのことを伝えようというのは正に日本語文化ですね。研修や巡回相談の場では「もっと具体的な支援の例をたくさん教えて欲しい」と言われることがあります。
でも私は、それ一つが正解と思われたら、かえって可能性を狭めてしまうという気持ちもあって、あえて「具体的にどうするかは、みなさんが考えていってほしい」と思っています。
でも、英語文化は違います。英語は、とにかく細々したところまで説明したがります。情報をはっきり示す言語。(日本語で「愛してる」でも、英語は「I 私は・ love 愛している ・ you あなたを」ときっちり伝えるし)
この「インクルージョン~普通学級の特別支援教育マニュアル」もそんな例に漏れず、なんと全部で400にも及ぶアイデアが、生徒のグルーピングから毎日の課題、指示の出し方、生徒のタイプ別の配慮の方法などなど、シチュエーション別に細かく網羅されています。
言ってみれば、←こちらは芭蕉的表現、こちら→はシェークスピア的表現で、インクルージョンを伝えようとしているとでも言いましょうか(笑)
五・七・五で無限の世界を想像させるか、細かく詳しく(くどく)説明してイメージをわかせるかの違いかと。(かなり独りよがりな書評だな・・・・)
とにかく、拙著で物足りなかった人、もっとたくさんの「具体例」を知りたい人は、一読の価値ありです。
※書籍タイトル・表紙をクリックすると、アマゾンにリンクして購入できます。
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