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「注意」を働かせるための配慮と、指導~「学級まるごとADHD状態」にしないために
前回の話の続きです。
「注意」力というのは、脳の前頭葉(前頭前野)が司っていると考えられています。
自分の周囲の無数の情報・刺激の中から、自分に必要なものや重要なものを見分け、選び取り(選択的注意)、その情報を処理して状況や自分の取るべき行動を判断する。
そして、その行動を、どのように行うか、もっとも適切な方法を決定し、段取りを立てて、実行する。(実行機能)
その間も、自分の言動や結果起きている環境を常にチェックしながら調整し、必要であれば軌道修正も加える。(セルフモニタリング)
こうした一連の脳の働きがうまくいっているからこそ、私たちは学習に取り組んだり、仕事をしたりできるわけですね。
それがうまくいっていないとき、つまり疲れていたり、体調が悪かったり、酔っていたり、心配事があったり、周りが騒がしかったりすると、学習にも仕事にも集中できません。
一時的なコンディションの問題ではなく、もともとこの働きがうまくいきにくい子どもたちもいます。彼らにとっては、授業中に周囲の雑音を無視して先生の話や友達の発言のみに耳を澄ます、という他の子が当たり前にできることが、うまくできません。視覚的な刺激も然りです。目に入るもの、耳に入るもの、全てに反応してしまうので、気が散りやすいですし、(周囲から見れば)無関係な発言が多い。終始喋っているか動いているかして、落ち着かない。
その状態が彼らにとっては常だから、自分が気が散っていること、落ち着かないこと自体を自覚できていないのではないか・・・そんなふうにも見えます。
そういう子は、どの教室にもいるし、P先生の教室にも、もちろんいます。
ただ、ずっと「通常学級での支援」の在り方を模索してきたP先生の教室は、こうした子どもたちが二次的な問題を起こさずに済むような予防策が張り巡らされています。それは、刺激を減らした気が散りにくい教室環境、注意を向けやすいような提示の仕方、取り組みやすい授業の構成など至るところに配慮と工夫を垣間見ることができます。
それだけではなくて、P先生は必ず、全員が注目するまで待ってから話をします。
子どもたちが静かにならないときには、いくつかのテクニックがあって、たとえばカウントダウン(5秒数えるうちに話をやめようね、という合図)やブロークンレコード(壊れたレコードのように、表情、態度、声の大きさは変えずに、穏やかに同じ言葉を繰り返す。子どもが注目していないときや、興奮していて指示が入らないときなどに有効)などで注意を促します。
P先生に限らず、注意機能の弱い子どもが学級にいても比較的まとめられている先生に共通して言えることだと感じています。(意識してか天性のセンスかはともかくとして)
根気がいりますが、これを繰り返し積み重ねて、子どもたちは(注意機能が弱い子どもも含めて)、「先生に注目する」ことや「話を聞くときは、口を閉じ耳を澄ます」ことを身につけていきます。だからこそ、あの時廊下側後列の子どもたちが「話が聞こえなくて困る」と気付き、ドアを閉めて、授業に意識を向ける・・・・それができたのでしょう。
もし先生が日頃から、子どもたちが注目していないのに話をしていたり、騒がしい状態に重ねるようにさらに大声を張り上げて話す、というのを繰り返してしまうと、失敗します。
子どもたちの注目する力、話を聞く力が機能せず、注目すべき対象を見失い、大事な情報と不要な情報の選択ができなくなり、「騒がしいのが普通の状態」になり、自分の話を聞いてほしい時は大声を出す・・・さらに騒がしくなる、という悪循環に陥ります。そして、先生の指示は通らなくなり、最終的には、崩壊するでしょう。「学級まるごとADHD状態」と表現したのは、そういうことです。
逆にいえば、学級全体の「注意」機能を育てていけば、「注意」機能の弱い子どもがいても全体でカバーできるし、その子自身の力も底上げが期待できます。
二次症状へ「対応」する支援から、二次症状を「予防」する支援へ。配慮はもちろんのこと、学級の力を育てるって大事よね、というのが「以前から考えていたこと」にヒットした要因。
と同時に、こうした脳のカラクリを子どもたち自身に理解してもらうことも、プラスに働くんじゃないだろうか、というのが私の「これからやりたいこと」にヒットした部分。これについては、次回に続きを書きます。
(※コメントをいただいて、→補足記事 を書きました。合わせてお読みください)
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