ペーパードライバーと書字困難~UDLを読んでみた(6)|アンダンテ西荻教育研究所・アンダンテプリモ

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ペーパードライバーと書字困難~UDLを読んでみた(6)

UDL(学びのユニバーサルデザイン)の話が、ずいぶん長い間中断してしまいました。

投げ出したわけではありません。遅々としたペースですが、解読は進めています。

シリーズまとめ読みは →こちら

原則1のガイドライン3まで書いたようなので、今日は

原則2 活動と表出のための多様な方法を用意する

ガイドライン4 「身体的な活動のためのオプションを用意する → いろいろな手先の操作や体を使う表出に対しての配慮を」 (金子の意訳 原文はUDL(©CAST) のサイトでお確かめください)

について、考えてみたいと思います。

この章では、脳性まひなど明らかに身体的な困難を持つ子はもちろんのことですが、ADHDなど実行機能に弱さがある子、言語表出に苦手がある子、書字に困難がある子などなど、あらゆる意味で

自分が学んだことを表出する際の「多様性」への配慮を求めています。

先日、ある中学生(このブログにはしょっちゅう登場してもらってますが)の子と、学年末テストに向けて数学の勉強をしていました。

学校で配られた数学のテスト対策プリントに、「注意事項」が箇条書きされていたので、1項目ずつおさえていきます。

「“定義と定理を覚えておくこと” これは、大丈夫?」

「教科書の枠で囲ってあるところでしょ。うん、もうだいたい覚えた」

「“作図の問題を出します”、っていうのは、たぶん私の予想では、この問題のことだ。家で説き方確認しといて」

「オッケー」

「“ていねいな字で書くこと。読めない字はダメです。とくに0と6”・・・・・なんじゃこりゃ???」

私は、ほんとうに、ほんとうに、この一文に絶句してしまいました。

私が飲みこんだ言葉を、彼が代わりに吐き出しました。

「この文は、要するにオレに向けていってるんだよ。わざわざ、こんなとこに」

今年度、特に夏休み以降、彼はそれはそれは一生懸命勉強しました。勉強のしかたもすごく成長して、つきっきりで指示したり、手とり足とり教えなくても、自分から勉強に取り組み、問題を解くことができるようになってきました。それに、もともと理解力や論理的に考える力は強いので、それなりにわかっているし、できている。そのことは私が保証します。

だけど、学校のテストで点が取れない。

壁になっているのは、彼の注意制御と集中力の維持の弱さ+書字の困難。

確かに彼の解答用紙は、いつも糸ミミズがのたうちまわっているような字が並んでいます。

でも、わざとじゃないんです。

たぶんプリントに書かれていた文を好意的に解釈するならば、先生としては「きれいな字で書きさえすれば、キミは点が取れるんだから」という思いから、「ていねいに書くことを意識しろ」と注意喚起してくれているのでしょう。

だけど

「それは無理だよねぇ・・・?」

「無理」

最初から諦めているとか、努力してないとか、そういうことではないのです。

“字をていねいに書く”ことを意識させてしまったら、彼の限られた注意機能は、彼のもっとも困難な“書く”作業に総動員されて、間違いなく、解ける問題も解けなくりますし、集中力が最後まで持たなくなります。

これは、おそらく当人にしか分からない大変さかもしれません。

たとえば、車の運転。

もうなにも考えなくても体が運転操作を覚えている(=自動化)人にとっては、運転しながら歌を歌ったり、考え事をしたり、気ままにドライブを楽しむことだって、できるでしょう。

だけど、ペーパードライバー歴20年近い私が、今から「車で職場にいけ」と突然言われたら、これはもう大変なことになります。えっと、まずキーを挿して、エンジンをかけて、ハンドルを持って、ミラーを確認して・・・・・運転するという「身体的操作」に全集中力を注ぎこまなければいけませんから、ふだん電車で通っているときのように、通勤中に頭で今日の仕事のリストアップや段取りを考えたりするなんて、絶対にできません。

だから、彼にテスト前に最後に伝えたメッセージは

「字のことは一切気にしないで、まずは問題を解くことに集中して。もし、時間が余ったら、読めなさそうな字だけ直せばいいから」

今はこれが、私たちにできる方略の精一杯。

いったい何回伝えたら、理解してもらえるんだろうね、と話しながら。

100点を取りたいわけじゃない。彼の力を正当に評価するための手立てを取ってほしいだけなのです。

選択肢式の問題にするとか、口頭での解答を認めるとか、欧米では既に当たり前になっている「配慮」を、不公平だ、テストは公正にしなければいけない、という理屈で退けられる。

ならばせめて、一度書いた解答が先生が「解読できない」というのならば、何と書いたのか本人に聞くぐらいは、できないものかと思います。

前にも書きましたが、中学で行われていた配慮は、都立高校の入試の際に申請できるのですから。

UDLガイドライン4では、手先や体を使う活動や教材教具が不器用さによってうまく操作できない子どもたちに、他の方法での表出を認めるとか、より使いやすいものに変えるとか、便利なツールを学習で使えるようにすることなどを求めています。

たとえば鉛筆で書くことが困難な子も

ペンと画用紙なら描きやすい子がいるかもしれない

コンピューター(キーボード)なら使えるかもしれない

タッチパネルやボタン操作ならできるかもしれない

もちろん、逆の子もいるでしょう。

キーボード操作がとうとうマスターできなかったうちの母ですが、携帯のメールなら簡単に打てます。

どの方法がいいかは、人によって違います。

ここで大切なのは、その方法が使えないことで、その子が学んだこと(知っていること、理解していること、できること)を使えないということを避けるための配慮です。

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