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ゴールデンウィークの公園で「ソーシャルスキル」を考える ~SST再考3~
昨日、甥っ子姪っ子と出かけた先の公園は、連休の家族連れや幼稚園の遠足などでにぎわっていました。彼らの遊びの光景をながめていて、いや~、幼児ってこんななのねぇ・・・・と実感しました。みんなみんな、ソーシャルスキルも何もあったもんじゃない。自分の意思を通すためには、泣く、他の子を押しのける、たたく、ボールをぶつける・・・・。
ある遊具施設で、飛び降りるのがちょっと怖くてためらっている子の後ろから、順番を待ちきれず「はやくしてよ!」と背中を押しているヤツがいて、「危ないよ」止めに入ったら自分の甥っ子でした(汗) 後で偶然、そこでもめた子とバスで後ろ前の席になり「あ、さっき会った子だ」と甥っ子。「ぼく3さい」「ぼくも3さい」と言葉を交わして友達になっている・・・・。みんなこうやって、失敗と成功を繰返しながらソーシャルスキルを身につけていくんですね。
もちろん、何事にも得意不得意があって、すぐに要領を得る子もいれば、なかなかそうはいかない子もいます。苦手な子はトラブルの原因を作りやすいので、どうしても叱られがちで失敗体験を重ねやすいし、悪循環にも陥りやすい。加えて、何より、親御さんが大変な思いをしていらっしゃることが多いのではないでしょうか。
そんな子どもたちや親御さんをお手伝いできるといいなぁと思いながら、うちのグループ指導も毎回試行錯誤を重ねています。
さて、このシリーズ(「SST再考」 まとめ読みは→こちら)の初回で、挨拶を例に挙げましたが、もう一度そこに戻ってみたいと思います。
顔を合わせたら「こんにちは」とか「おはようございます」。
相手にいやな思いをさせてしまったら、「ごめんなさい」。
私たちの教室に通ってくる子どもたちの中には、そんなあたりまえのやりとりを、当たり前にできない子が、少なからずいます。
たとえば、「おはよう!」のかわりに、いきなり相手の頭を後ろから叩いてしまう。
当然、相手を怒らせたり、叱られたり、けんかになったりしてしまいます。
たとえば、15分も遅刻してきたのに「ごめんなさい」もなく、何事もなかったような顔をして淡々といつもどおり席に着く。「遅かったね。何してたの?」とたしなめると、「電車が遅れたんだから仕方ないじゃないか!」と、逆にふてくされる。
ふつう、こういう態度をとれば相手をムカッとさせるし、失礼で常識のないやつというレッテルを貼られるから自分が損をすることになります。
だけど、発達障害の子どもたちは、人との適切なかかわり方を理解したりスキルを獲得することが他の子より難しい場合がしばしばあります。
相手の頭を後ろからたたけば、相手は驚いた顔をし、「痛いっ!」と声を上げて振り返る。その反応を「面白い」と感じても、相手が嫌がっているということが理解しにくい子。いわゆる「心の理論」が未獲得の場合もありますし、結果的に仕返しをされたり、叱られたり、仲間に入れてもらえなかったりして自分が嫌な思いをしても、そもそも自分に原因があるという因果関係を理解できていない場合もあります。
先ほどの遅刻の例もそうで、「自分が悪いのになぜ謝らなければならないの?」と、本気で聞き返してくる子たちは、一人二人ではなく、今まで何人も出会ってきました。遅れたのは電車。自分はいつもどおり家を出たし、急いで来た。「悪いことをした=謝る」というスキルは知っていても、悪いことをしていないのに謝る理由はわかりにくい。
だから、丁寧に教える必要があります。
「君が遅れた理由を、私は知らない。たとえ君のせいでなかったとしても、私は君を待っていたわけだし、何があったかわからないからなおさら、心配していたのよ」と、本人が見えていない相手側の状況や気持ちを伝え、
「遅れそうだと分かった時点で、まず電話を一本入れてくれるのがベストだった」(ここでほとんどのアスペっ子、自閉っ子は「電車の中は携帯を使ってはいけないんだもん!」というルールを主張しますね(笑) 「分かりやすいルール」は頑なに守る彼らです。) 「事情があって連絡できなかった場合は、まず、待たせたことに対して『ごめんなさい』、次に理由を話す。そうすれば、ああそうだったのか、と私は納得するでしょう? こんどからそうしてね」という具合に、どうすべきだったかを提案する、という具合です。
強調しておきたいのは、一度教えれば次からできるというものではない、ということです。
何度も何度も、似たような場面に出くわすたびに繰り返し教え続けて、長い時間かかってわかるようになる子たちなんですね。
で、SSTなんですが、理論的には色々な手法がありますが、通級指導にしろ私たちのような民間の機関にしろ、その場所での活動だけで問題が解決することは有り得ません。
たまに「こういうことができないので、できるようにトレーニングしてもらえませんか」といったご要望を受けることがあるのですが、ここで私たちが「できるように」してあげるのは難しいのです。
私たちにできることは、せいぜい「気づかせる」ところまでじゃないかと思います。
子どもたちが「こういうことを言うと、相手はそう思うのか・・・・」「こんなときは、そういうふうにするといいのか・・・・」と、一つでも二つでも気づいてくれれば・・・・と願いながら、いつもプログラムを組んで指導しています。その「気づき」を実践する場は、家庭や学校での日常生活に他なりません。ですから、「通級に通っているから」「アンダンテに行っているから」その子が変わるのではなくて、そうした場で子どもが気づいたこと、気づきかけていることに対してどう働きかけていくか、親御さんや先生方との共通理解と、協力しての小さな積み重ねが大切だなぁと思います。
SST再考シリーズ、しつこく次回に続きます。
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