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涙の訴え「字をきれいに書こうとすると、わからなくなる」~字を各筋肉を操る力2
前回の話から続いています。(運動機能編まとめ読みは→こちら)
字は汚いよりはきれいな方がいいのは確かだとしても、本人が一生懸命書いた宿題や作文や答案を「雑だ」「下手だ」と叱られたり、字が汚いからと言って人格まで否定されるような言葉をかけられたり、年齢相応に字が書けないことを理由に「この子は学力が低い」とみなされる筋合いはない、と私は思います。
ただその人が、字を書くのに必要な機能が弱い、というだけ。(字を書くために必要な機能は書字運動機能だけではありません。注意も、記憶も、言語も、さまざまに絡み合っています)
さらには、字を書くことに苦手さを抱える子に対して、それを強要(というか、「叱咤激励」のつもりなのだとは思いますが)しても、必ずしも問題が解決するわけではないし、逆にその子の持つ他の能力を伸ばす機会を奪うことにもなりかねません。
前回話題に出した子は、私が担当していたのですが、私の一方的な思い込みによる失敗に気づかせてくれた子でした。
彼は文字を一定の大きさで書けなくて、書くにつれて字がだんだん小さくなるものだから、掛け算や割り算の筆算をやっていると、次第に位がずれてしまったり、0だか6だか自分でも読めないような字になってしまうので、なかなか正答が出せなかったのです。
さて、そんな子に対して、みなさんならどう対応しますか?
私は「筆算はマスのあるノートでやりなさい」と、彼に助言しました。位がずれるんだから、マスで位をそろえれば計算ミスが減るだろう、というテキストどおりの発想で。
これが失敗だったんです。その子には。
マスのノートを使っても、1マスに1文字ずつ書くということが、彼には至難の業でした。字が大きくなったり小さくなったりするから、マスをまたいでしまう数字もあれば、あるマスには数字が2つも3つも入ってしまう・・・・。
「マスにあわせて字を書かなかったら、位をそろえられないじゃん。ちゃんとマスに1つずつ入るように書いてよ」
と言うと、彼は慎重に字の大きさに気をつけながら書くことができます。「ほら~、書こうと思えば書けるんじゃん」
ところが、字をていねいに書くと、計算ができなくなるのです。一生懸命、字の大きさに気を配って書くことに全意識を集中してしまうがために、今どの数字とどの数字を掛けたか、次は掛けるのか足すのか、繰り上がりや繰り下がりにも気をつけて・・・・など計算の手順まで頭が回らなくなってしまうのです。(たぶん、ワーキングメモリの許容量をオーバーしてしまうのですね)
「マスにちゃんと書こうとすると、わからなくなるんだよ」
彼に涙目で訴えられて、ハッとしました。
これでは、本末転倒じゃないか、と。
喩えていうなら、いつもは何でもない階段を、「ボールを頭にのせて上れ」というようなものかもしれません。
もともと彼は、計算能力はそれなりにあるのです。
ケアレスミスのほとんどは、注意機能の弱さ+字を書くことの極端な苦手さから来ていました。
そこへ私が、「きちんとマスに字を書くこと」に注意を向けることを求めてしまったがために、本来だったら問題のなかった計算する力までも発揮できなくしてしまったのでした。
LD学会の特別講演でマリアン・ウルフ教授も、よく似た話をしていらっしゃいました。
読み障害のある子は、「すらすら読めない」ことで、読むことに時間やエネルギーをたくさん費やさなければならないため、考えたり覚えたりすることに十分な時間やエネルギーを取れないというハンディを負うことになる、だから適切な支援が必要なのだ・・・と。
試みた支援の効果が出ていなければ、原因を探り、新たな支援の方法を考えなければいけませんね。
マスに字を収めることでいっぱいいっぱいになっていて、計算に費やす余力がなくなってしまった彼、計算用紙を線もマスもない「白紙」のノートに変えて、その際、なぜ私がますのノートを使おうと考えたかを説明しました。
「キミの場合、計算する力はあるのに、字がどんどんずれていってしまうことで間違えてしまうんだよ。だから、白紙のノートで計算するときも位だけはズレないように、それから急いで書きすぎて自分で読み間違えるような字にならないように気をつけてね」
彼はこのことを十分理解し、今ではぐちゃぐちゃの字での筆算でも、計算ミスをすることはめったに無くなりました。
同じようなことがさまざまな場面で起きているのではないかと思います。字を書くという壁にぶつかって、本当は問題のないその先のことにまで影響を及ぼしている子がいるかもしれません。
他にどのような支援ができるか、引き続きお話を続けていきましょう。
学習支援シリーズ、クライマックスです。こういう子たちをたくさん見てきているので、すごく力を入れて書いているんですけど、伝わるかなぁ。。。。
たくさんの先生に読んでもらいたいので、応援のクリックよろしくお願いします。
※参考文献 「<できる>子どもの育て方」、"The Mind That’s Mine" Dr.Mel Levine
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