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平成のトットちゃんたち~どうする先生?(3)~現場の先生のいろいろな工夫
前々回、前回の話の続きを、“いちおう”書いておこうと思います。
(1)でAくんの授業中の言動、 (2)でその背景にあるAくんの特性と気持ちの私なりの解釈について書きましたが
それに対してどうすればいいのか?
higeさんのコメントに
このケースについては、
①お子さんが元気で明るい
②担任の先生が追い詰められてない
③仲の良い友だちがいる
④書字が早い
⑤お子さんは担任を好きなど、状況改善のための材料が沢山あると思います。
とありましたが、私も、まずはポジティブな部分、強みを探すことが大切だと思います。
それは「困った子」という見方から抜け出せない限り、見えてこないんですが。
でも、強みは必ず、状況をよい方向に持っていくための大切なポイントになります。
それから、
たとえばseiさんのコメントにあったように
他の子が時間のかかる「わ」、30秒で完成させちゃうなら、彼には余った時間を潰せる課題を用意すればいい。それは量的なものでもいいし、質的なものでも(ちょこっと横に行って、「このわ、素敵だけど、ちょっと小さいね。3番目に書いたのは大きさも形も最高だから、同じように書いてみてよ。などと囁くと、結構一生懸命やってくれたりしますよね)。
喋りたい、でも指されない。だから勝手に発言しちゃう。
娘のクラスの担任の先生は、意見を言いたい子全員を立たせて順番に話しを聞いていきます。同じ意見が続くようなら、「だれだれさんと同じで・・」「だれだれさんにつけたして・・・」というように「発言の仕方」を刷り込むのに使っていらっしゃるように見えます。
全員発言できる安心感からか、「我先に」と指されもしないのに勝手に発言する子はいなくなりました。
「だれだれさんに・・・」というために、他の子の意見を注意して聞く習慣にもできてきたようです。
というような、ちょっとした工夫でプラス方向に持っていく。私も基本的に同じ考え方です。
といっても、正解はひとつではないし、ある先生がある子どもに対してうまくいった方法が、他のケースで必ずしもうまくいくとも限らない。
要は、試行錯誤です。ただし、ふりまわされないように。そのためには、(2)で書いたような「なぜ」を考えるプロセスが欠かせないのです。
これまで私が見てきた、いろいろな先生のいろいろな工夫で、このケースにも活かせそうなことをずらっとあげてみます。
☆注意の仕方を変える。
- お手本となる子に「ほめる」声をかける。
- よけいなことをしている子は、そばにいって、そっと合図したり囁いたりして注意。Aくんには「~しちゃだめ」ではなく「○○しましょう」という声がけをする。
- ちゃんと出来てるときにフィードバックする
つまり、Aくんは友達の真似をすることで先生の注目を引きたいわけですから、
「あっ、Cくん、姿勢がよいね」「Dさん、もう準備ができてる。えらいなぁ」と、ほめる。そこでAくんがあわてて姿勢を正したり、準備をした時点で「Aくんもできたねぇ、いいねぇ」と声をかける。
こういうタイプの子には、ついつい、望ましくないことをしているときに関わり、ちゃんとやっているときは放ったらかしになりがちなんですが、「ほめて育てる」が基本です。
(たまに「ほめるところが見つからない・・・」などとおっしゃる方がいますが、ほめられるシーンをこちらで導いてあげればいいんです)
☆早くできた人の待ち時間を埋める
- 「できた人は○○をして待っている」と明確な指示を出しておく
- できた人に、次の課題をどんどん与える。
- 早い子と遅い子のタイムラグを作らないような授業の形にする。
Aくんは、やることさえあれば、それが何であれ全力投球で打ち込みます。することがないから、自分ですることを見つけてしまうわけで・・・。あと、体が動いてしまうのですから、体を動かしていい時間をさりげなく入れてほしいところです。
たとえば、なんとなく机間巡視するのではなく、「かけた子は先生のところに見せにくる」という形にしている先生もよくいらっしゃいます。これなら、速く書けたAくんは、じっと座って待つことを強いられず「立つ」「並ぶ」という動きも入ってラクになりますし、まだできていない人との時間差を埋めさせる指示をいろいろと出せます。
待っている間、本を読んでいいとか、絵を描いていい、という先生もいらっしゃいますし、
それが邪道とお考えなら、その間に「わ」のつく言葉を思いつくだけノートに書いてごらん、なんて言ってもいい。座っていられないことが確実なら「教室のなかを歩き回って、“わ”のつくものをさがしてみよう」というのもアリかも。
☆授業のスタイルを変える
- ノートにまず書いて、隣の人と見せ合いっこ
- 大きめの紙に書いて、前に出てきて見せる
- 体を動かして学ぶ活動を入れる。
「わ」のつくことばを思いついた人は挙手、先生があてた人が発言・・・・では、しゃべりたくて仕方のないAくんは、我慢我慢の時間になってしまいますし、逆に発言できない子が参加できていない状況ともいえます。
全員が考え、全員が発言する工夫として「隣の人と言い合う」という方法がありますよね。
あと、Aくんのクラスを別の時間に覗いたとき、Aくんが張り切ってやっていたのが2つ目にあげた、画用紙に書くというアイデア。全員が自分の思いついた言葉を書く→クラスの全員(を3つにわけて)が前に出てきて自分の書いた言葉を発表する。 これなら確実に全員が自分の考えを表現できるし、しかも前に出てくるという「動き」が入るのでAくんにとってもプラス。
それから、Aくんはもちろん、低学年の子にとって、話を聞く・字を書くだけの授業は苦痛です。体を使って覚える活動(両手を筆に見立てて「わ」を空中にかいてみるとか)を入れていらっしゃると、子どもたちの注意の持続がぜんぜん違うなぁと思います。
などなど、いずれも、実際に現場の先生方がやっていらっしゃるアレコレを書いてみました。
「教室から出て行け」という脅し文句は、教室が、授業が、その子にとって楽しみな場になっていなければ通用しません。Aくんが、自分のがんばりを認めてもらえていて、しかもじっと座っている苦痛を感じず楽しんで過ごしていたら、「はーい」と出て行ってしまうことはないと思います。
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