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続・用語の再定義
久しぶりに上野先生のブログをのぞいてみて、この記事がひときわ気になりました。
文科省が、公文書での「LD、ADHD、高機能自閉症等」という表記を「発達障害」に改めるとのことです。
ちょっと硬い話題になりますが、以前にも書いたように、私も用語の定義は大切なことだと思います。文科省の説明も興味深いものですし、上野先生の解説が大変わかりやすいので、みなさんもぜひお読みになってください。
http://edublog.jp/kaz1229/archive/70
これを機に、「いわゆる軽度発達障害」という言葉の氾濫は、少しはおさまってくるでしょうか。(ついつい「いわゆる」という枕詞をつけたくなる用語でした)
定義のあいまいな言葉というのは、便利さと危うさを持ち合わせているので、安易な使い方はしないようにしたいですし、どうしても他に妥当な言葉がないときでも慎重にならなければいけませんね・・・。
とはいえ、懸念も残っています。
ひとつは、「特別支援教育」の対象として「発達障害」という言葉が明確になったことで、逆に「あいまいな子たち」の扱いはどうなっていくのかなぁ、ということです。
巡回相談に行くと、現状では「具体的な診断名が出ているわけではない」「医療機関や相談機関にはかかっていない」「親御さんは特に問題を認識していない」けれど、先生方から見て「気がかりな子」たちのケースが、たくさん挙がってきます。本来は、学校と家庭と専門家の連携体制を築いていくことが望ましいのですが、日本では、発達障害などの疑いを教師等が感じた場合に、適切な機関に報告し支援につなげられる体制が確立されていません(児童虐待の通報義務でさえ難しい国ですから、当面は無理でしょうね)。そんなこともあって、特別支援教育が定着し成果が出てくるまでの過渡期のうちは、「発達障害」かどうかがあいまいな事例が多いのも、やむをえないのではないでしょうか。その時に、「LD、ADHD、高機能自閉症等」の「等」のところが、なかなか便利だったのです。
「あの子は、いったい何なんでしょう?」という相談を受けたとき
「私は診断名を下す立場にないし、相談の目的は気がかりな子に診断名をつけることではなく、支援をすること。支援が必要ならば、診断名が付いていなくても、今ある情報から可能な範囲での見立てをもとに、学校として対応できること、あるいは教室の中で先生が工夫できることを考えていきましょう」
というスタンスで考えるようにしてきました。このブログも、同じ考え方で書いています。「等」というあいまいさは、そういう意味では都合のいい表記でした。
でも、通常級での特別支援教育の対象=「発達障害」と明確になると、「何らかの発達障害の診断名がついていないと、特別支援教育の対象にはみなされない」ようなイメージが頭に浮かびます。とすると、診断のついていない子は支援の対象としてみなされず、逆に支援のために診断が氾濫する、などの事態にならないだろうか・・・・と少し嫌な予感がしています。
もうひとつは、上野先生のブログでも触れられていましたが、「LD」という用語も、もう一度定義の整理をしていただけないだろうか、ということ。「軽度発達障害」や「~~~等」と同じ意味での便利さ、都合のよさから、ずいぶん広い意味で使われてしまっていることがある気がします。しばしば(とくに米国取材の際)、私の言っている「LD」と相手の考えている「LD」の概念は、微妙に一致していないのではないかという不安を覚えるときがあるのですよね・・・・。
言葉が変化していくように、言葉の定義もまた変化しうるものですから、今後の動向に注目しつつ、私自身も自分がその言葉をどう定義しているか、見直してみようと思います。
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