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ルールって何だ?(3)
突然話が変わるようですが、いちおう(1)、(2)、前回の(注)、から続いています。
昨年春、出張で中国に行きました。あの反日デモが相次いだ直後です。
最終日、一行(私を含む3人組)は通訳を外して、観光がてらの街歩き。昼食をとるために地元の食堂に入り、そこで、ちょっとしたトラブルを巻き起こしてしまいました。
3人はほぼ全く中国語を話せません。周りの人たちの動きを観察し、その店は予めレジで食べたいものを注文してお金を払い、テーブルで待つと、じきに頼んだものが運ばれてくる・・・・という「ルール」らしいと理解し、指差しとボディランゲージで注文と代金の支払いを済ませました。でも、テーブルにもメニューが置いてあって、ウェイトレスのお姉ちゃんがお水を運んでくる。レジで前払いじゃなくてテーブルで注文もできるのかしらん・・・とはその時はあまり気にかけてはいませんでしたが・・・。頼んだ料理は出てきたのにビールが来ないので、ウェイターのお兄ちゃんを呼び止め「ビーチュウ、ビーチュウ(ビールのこと)」というと、お兄ちゃん、ビールを2本持ってきました。「いやいや、1本しか頼んでないから」と、そのうちの片方を受け取り、栓を開けてもらい、無事仕事を終えた達成感から「かんぱ~い!」。・・・・すると、そのお兄ちゃん、ビール代を請求してくるんです。それも、お値段メニューの表示価格の倍!
「このやろー、やっぱり中国人はこれだ。日本人だと思って、ふっかけてきてるに違いない!」と訝しく思った私(たち)は、猛然と反論(日本語でわめいただけ)。そのウエイターのお兄ちゃんに加え、あわてて飛んできたウェイトレスのお姉ちゃん、「ワタシエイゴハナセマス」という先輩格のお兄さんも登場して、騒ぎは大きくなり、店内の注目の的に。で、彼らが言うに、私たちが飲んでいるビールは、隣のレストランで出している高級ビールだと主張するではありませんか。「なんで、頼んだのと違うビールを開けるのよ。それはそっちのミスでしょ!」と、ぶちきれた私(たち)の一喝で、店員たちはいったん店の奥に退散しました。・・・・が、その店員たちが何やら作戦会議してるのが見えるのです。いや~なムード。ああ、ただでさえ険悪な日中関係を、さらにこじらせることになるかもしれない・・・・。
すると、先ほどの店員のお兄ちゃんとお姉ちゃんが再び私たちのところにやってきて、小さな紙切れを差し出しました。そこには丁寧な字で何か書かれています。中国語は漢字、立派な「視覚化された支援」。解読すると「あなた方は○元のビール代を払いました。でも、あなた方は△元のビールを飲みました。ですから、差額の▽元を払ってほしいのです。よろしく」
これで、ようやく我々は、すべてが互いの誤解から始まったことを察しました。相手にしてみれば、
①私たちが「ビール」と言ったから、ウエイターは注文されたと思いこみビールを持ってきた。
②それも、言葉の分からない私たちのために気を利かせて、2種類のビールの実物を見せてくれた(視覚的支援!)。
③私たちは何も気づかず、そのうちの1本(たまたま高い方)をとった。
というわけだったのです。このちょっぴり恥ずかしい一件は、私に大きな示唆を与えてくれました。言葉の分からない国に行くと、発達障害の子どもたちがどんなことに困るか、疑似体験できます。
私たち、知的な遅れはない(と思う)のですが、中国における中国語能力と言う点では、完璧にハンディを負っています。この事件も、もし通訳が一緒だったら起こりえないことでした。ですが、常に通訳がいなければ行動できない、というのは、ちょっと不便で窮屈なことですし、何より「自立」できません。
そこで、見方を変えてみます。この店の「ルール」が、もっと外国人にもわかるほど明快だったら。。。食べたいものはどうやったら手に入るのか、お金はいつ、どこで払うのか。
「前払いも後払いもできる。レジで払うこともあればテーブルで払うこともある。メニューにないメニューも存在する」 ケースバイケース?!臨機応変?!?!
ルールが一貫しておらず、しかも状況で判断しにくいとなると、そこは、予備知識も言語力もない私たちにとって、非常に不安と緊張の高い空間となります。間違いを指摘されても理由が分からないので、誤解やトラブルの元にもなりかねません。
発達障害の子たちにとっての「ルールのあいまいな教室」というのも、そういう場所なのではないでしょうか?
なんでもルール化することを勧めているのではありません。
「ルールが一貫していて、かつ、一目瞭然であってほしい」と言いたいのです。
次回は「教室」に場所を戻して、話を続けましょう。
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