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「加配」が陥りやすい心理
前回の「加配」の話に、色々コメントいただきました。「明日からできること」というコンセプトには馴染まない話題かなぁと、ちょっと迷いましたが(「明日から加配をつける」なんてこと、現実には難しいですものね) もう少し続けることにします。
「加配がつく」といっても、さまざまな入り方がありますよね。Aくんの担当として入る、複数の「気がかりな子」を中心にフォローする形、T・T(ティームティーチング)として入る場合・・・などなど。それぞれに目的や課題、気をつけなければならないことなどは異なりますね。ここでは話を広げすぎないよう、「Aくん担当」という形で加配をつける場合に絞って、考えてみます。
私の経験も絡めての実感ですが、加配の立場で教室にいると、非常に気を遣います。そして、見えないプレッシャーを感じ、ともすれば奇妙な心理に陥ります。
たとえば、そのAくんがパニックを起こしてしまったとき、「Aくん担当をつけているにもかかわらず、何をやっているんだ」と思われないだろうかと気になってしまったり、Aくんが立ち歩いていると、すぐに捕まえなきゃ「何のためにAくん担当をつけているんだ」という目で見られるんじゃないかと焦ってしまったり・・・・。(公共の場で子どもがごねたり騒いだりしたとき、親御さんが感じるプレッシャーと似ているかもしれません。「『しつけがなってない』という目で見られているような気がする」的な・・・あれです。発達障害児の親御さんは、その数倍は感じてると思いますけど)
「Aくん担当は、Aくんに『問題行動』を起こさせないためにいる」という認識で加配をつける・あるいは加配としてつくと、絶対にうまくいきません。「ちゃんとさせなきゃ」という焦りやプレッシャーからくる指導、つまり騒いだら黙らせる、パニックを止める、立ち歩いたら連れ戻す・・・・などは、いわゆる『問題行動』(『 』付きの理由は説明不要ですよね? それは本当に「問題行動」か?参照)を逆に誘発したり増長させたります。(その理由は、「加配」に限定された話ではないので、また折を見て書きたいと思っています)
Aくん担当としてAくんの隣(や後ろ)についていると、Aくんに対して常に働きかけていないといけないような錯覚にも陥ります。黙って隣にいるだけでは、仕事をしていないみたいに見えるのではないか?と。それで、ついつい過剰に声をかけたり手を出したりしてしまいがち。
でも、そうではないのです。「Aくん担当」は、プロンプター。「Aくんが必要なときに、必要最小限の援助をする」。これが何より大切だと思います。あくまでも、教室という舞台でAくんがかかわるべき相手は、担任の先生とクラスメート。「Aくん担当」は黒衣のように存在感がないほどいい。だからもちろん、担任は加配の先生に「おまかせ」ではなく、Aくんとの信頼関係作りに心を砕いてほしい。加配が付いても、Aくんが失敗したりパニックになることはあります。それを恐れず、むしろAくん自身がそれを乗り越えるために手を貸せればよいのではないでしょうか?
「Aくん担当」は、「『問題行動』防止係」でも「お世話係」でもありません。「いずれ、加配なしでも授業に参加できる」という遠い最終目標に向けての、手がかり、足がかり、なのです。そのためにも、ちょっと心の距離を置いて見守るぐらいの気持ち、場合によっては、あえて手を出さないときもある・・・・ぐらいの強い信念を持って「加配」という立場で教室に入りたいのですが、それには、信頼関係が不可欠です。Aくん本人との信頼関係、そして担任の先生との信頼関係。
担任の先生は、なぜ、あの時、Aくんにあのような対応をしたのだろう?
加配の先生は、なぜ、あの時、Aくんにあのような対応をしたのだろう?
担任の先生は、なぜ、あの時、Aくんにこういう対応をしなかったのだろう?
加配の先生は、なぜ、あの時、Aくんにこういう対応をしなかったのだろう?
・・・・互いの言動の背景がわからない、もしくは誤解してしまっているとき、ささいな不信感が、つもりつもって不協和音になってしまいます。いいチームプレーができなくなれば、決してA君にも周りの子どもたちにもいい影響を与えませんよね。だから、できるだけマメに話し合う機会を持ちたいものです。
そして、「Aくん担当」がついたら万事うまくいく・・・という現実離れした期待は持たないこと。加配が付いても、Aくんに対してのアプローチはスモールステップが原則であることに変わりありません。
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