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「ごんの気持ちが分かったかどうか」がゴールではない~読みの指導の勉強会やりました。

先日、米国イリノイ州の小学校で教員をしていらっしゃる中川優子先生をお招きし
読みの指導プログラムについてのスタッフ勉強会をしました。
優子先生には、かねてから、米国では子どもたちの読み(ここでいう「読み」とは文字を読むことと内容理解の両方を含んでいます)の力の向上がとても重視されていること、日本の学校の国語の授業とはかなり違うアプローチで指導されていることを伺っていたのですが、今回具体的なお話をお聞きして、私はもう、それは天地がひっくり返るくらいの驚きと危機感を覚えたのでした。
日本の国語教育と決定的に違うのは、
まず、学級全員の読みの力を個別にアセスメントが定期的にされているという点。
アセスメントで介入が必要な(つまり、何らかの手助けをしないと学習上支障が出てくると判断された)場合は、その力を引き上げるために専門的な指導を加えていく。一方で、すでに年齢相応に対して十分な読解力がある子には、さらにその力を伸ばすための指導をする。
もう一つの大きな違い。レベル分けされた膨大な読みの教材があり、個々人の読みのレベルに合った教材(読み物)を用いて学習していく点。
reading.jpg
(↑ AからZまで分類された読み物教材)
当然ながら、学級全員が一つの題材を使って一斉に読み合わせて内容を確認していくという、日本で当たり前に見られる国語の授業のやり方では、個々の読みレベルに対応して指導するというニーズには対応できません。
だから。。。
優子先生、生徒が各々に読んでいる教材(読み物)の内容をよく知らなくても、一度も読んだことない本だったとしても、読みの指導ができるのだそうです。
ちょっとまって、ちょっとまって。
もしも『ごんぎつね』を一度も読んだことない先生が、国語の授業で「ごんはどんな気持ちだったか」を教えられるんですか?
日本の先生には、“教材研究”って、すごく重視されてるんですけど?
「そんなのしませ~ん」と優子先生。
「だって、めざしているのは、”ごんの気持ちが分かること”ではなく、”ごんの気持ちを文章から読み取る力をつけること”だから」
つまり、米国におけるReadingの指導とは、そこに書かれている内容を教えるのではなく、そこに書かれていることを学ぶスキルを教えている、と言えば良いでしょうか
教師が教えるのは、”ごんの気持ち”ではなく”読解スキル”なのだということですね。
わたくし、目からうろこが落ちました。衝撃でした。
もちろん、日本の国語教育だって、本当はそれを目指しているはずなんです。言語力だって重視されている。
だけど、読みの力が今どのくらいあって、指導をすることによって、どのくらい向上したのかということを評価するシステムもなければ、“文章から必要な情報をどう読み取るか”とか“読み取ったことをどう言葉で伝えるか”というプロセスの指導をする時間は、現在の日本の国語教育ではほとんど時間を割かれていないのでは?
米国は、何しろ移民の国なので、学級内の子どもたちの読み書き能力の格差が著しい。だからこそ、こうした指導が重視され、指導方法の研究も進んでいるのだと思われます。
でも、21世紀、グローバル社会、世界市民として生きる子どもたちを育てる現代の教育において、
一斉指導で「はい、『ごんぎつね』音読しまししょう。ごんの気持ちがわかる表現に線を引きましょう。ごんの気持ちを話し合いましょう」とやっているだけで、一人ひとりの読解力を本当に伸ばせるのか。。。
とくに、読みに躓いている子どもの場合、その子の力に適していない「読み物」を読まされても、学習教材として適していないのは明らかです。この点についても私たちは、今まで以上に注意深く、本人に合った課題を厳選したうえで、効果的な指導を探っていかねばと思ったのでした。


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※12月17日追記
優子先生から、この記事に関してメールでコメントいただきました。
私の記述では言葉足らずな部分の補足の意味で、
追記させていただきます。
以下、中川優子先生より
「早速ブログ拝見させて頂きました。
低学年用の本でしたら、その場で子供たちと読み出しますが。。本の内容が深い、長い(小説など)本は、時間のある時に予め読むようにしておりますが、日本でいうところの教材研究は”いたしません。”」
「本、教科書、教材は、読みの読解法・攻略法を教えるためのマテリアルとして認識しています。ターゲットとなる読みの読解法、例:推測する、作者の主旨は、など 教授するスキルに適応した教材を探すことに注意を払います。ごんぎつねの段落構成、文章表現など、物語の解説、分析を子供たちに指導しておりません。」

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